高性能、複合化進む

 旋盤加工はモノづくりにおける各種切削加工の中でも最も基本的で重要な加工工程のひとつ。円形断面を有する部品加工に用いられ、金属を効率良く高精度かつ低コストで加工できるプロセスとして広く利用されてきた。多くの工作機械メーカーが製造する数値制御(NC)旋盤は、自動車や産業機械などに使われ、旋盤加工部品の量産を支えてきた。また、部品形状が複雑化し、要求される加工精度が高まる中、ミーリング用主軸や主軸以外の回転軸、焼き入れ用のレーザーなどを備えた旋盤構造の複合加工機であるターニングセンターの開発が各社で進んでいる。

付加価値高い部品加工

  • 高速、高精度加工機能を強化したB0205-V
    高速、高精度加工機能を強化したB0205-V

 旋盤構造の複合加工機ターニングセンターを日本工作機械工業会(稲葉善治会長)は旋盤を複合化したNC工作機械と説明する。多数の工具を備え、旋削加工のほか、工具を自動で交換できる回転工具主軸を持ち、回転工具による加工、穴あけなどの加工も行うことができる。ターニングセンターは1990年代後半には主要工作機械メーカーの製品が出そろい同機の注目度が高まった。日工会まとめた資料では、2年ごとに主催する日本国際工作機械見本市(JIMTOF)で2002年以降、ターニングセンターの出品数が増加。04年にはさらに展示機種数は増加し、ミーリング装置やY軸付きの旋盤が主流になったと報告している。90年代後半以降、急速にターニングセンターが普及してきた背景に、加工単価が高い加工ができるマシンとして評価された点がある。現在でも、複雑で付加価値の高い部品加工を実現する工作機械として各社は開発に力を入れている。

加工の自由度を向上させるためDMG森精機が18年に開発したのが複合加工機の「NTX2000/2500/3000 2nd Generation」。小型の工具主軸を搭載し、加工の自由度を高めたシリーズ。同工具主軸は全長が従来比150ミリメートル減の350ミリメートル。小さくした分、干渉する領域が減り、多様な寸法の加工対象物(ワーク)への対応を可能にした。全長1530ミリメートル、直径102ミリメートルまでのワークに対応。回転工具の付いた下面の刃物台に、同社として初めてY軸を搭載した。プラスマイナス40ミリメートルの軸移動などにより、加工時間を従来比約20%削減した。また、歯車の歯切りをするホブ加工にも対応する。

ツガミは7月、新型のコンピューター数値制御(CNC)自動旋盤「BO125―V、同205―V=写真」を市場投入する。CNC自動旋盤のベストセラー機「BO12/20」シリーズの後継機種。自動車や通信機器、IT製品向け小物部品の量産加工向け。設置面積は従来機種と同等で高速化、高精度加工機能を強化した。

加工対象物(ワーク)の排出機構を変更し、サイクルタイムを従来機比8%削減した。背面主軸の搭載位置を見直すなどして始動直後でも寸法誤差7マイクロメートル(マイクロは100万分の1)を実現した。主軸を囲むように配置した独自の刃物台構造により標準で21本のツールを装着でき無人量産加工を実現する。

省人化や労働環境改善に対応するためロボットの活用も進んでいる。オークマは自動化への提案として、工作機械に内蔵する次世代型ロボットシステム「ARMROID(アームロイド)」を小型複合加工機「MULTUS(マルタス)B250Ⅱ」に搭載した。同機は2017年、複合加工機の入門シリーズとして発売。チャックサイズを8インチ専用にし、ボリュームゾーンの中・小物部品加工需要に対応した。旋削主軸の最大出力は22キロワット、トルクは427ニュートンメートル。ミーリング主軸の最大出力は12キロワット、最高回転速度は毎分1万2000回転。床面積は7平方メートルと、省スペース設計で、工程集約効果の高さも評価されている。

今年11月にはJIMTOFが開催される。各社が時代のニーズをとらえ開発した最新鋭機が披露されるだけに旋盤やターニングセンターの進化が注目される。

 日刊工業新聞 2022年6月27日(月)付