自動車業界 部品調達が課題

 線材加工機は線材を塑性加工し、目的に応じてさまざまな形状に仕上げる各種機械。加工された素材は自動車や工作機械、建築物など幅広い業界で活用されており、産業社会を根幹からサポートしている。加工機では、制御や駆動に関わる機構を制御装置(NC)に置き換えることや、デジタル化へのニーズが高まっており、加工機メーカーの中には、オーダーメードで顧客の要求に応えている。

 

  • 断面形状を自在に加工できるタークスヘッド(アサヒ精機鉄工 提供)
    断面形状を自在に加工できるタークスヘッド(アサヒ精機鉄工 提供)

 加工機には、ダイスの穴を通して線材を細く引き伸ばす伸線機や、回転するロールの間に通して加工する圧延機、線材を細く引き延ばす伸線機などがある。線材を細く引き延ばす伸線機の中には、タークスヘッドという4方向に配置したロールで引き抜き加工によって断面を自在に変形できる。

 ほかにも加工対象物(ワーク)を曲げ加工するベンダーや、曲げ加工から切断までの加工をコイル材から引き出して連続して行うワイヤフォーミングマシンなど、さまざまな加工機が各工程で活躍している。

 加工機で加工してできた線材製品は、自動車や建築物に使用されるねじやクギ、バネ、ボルトといった機械要素部品から、歯列矯正のワイヤといった医療用の製品まであり、幅広い業界で活用されている。

 その中でも主要な用途先市場である自動車関連業界では、販売台数が伸び悩んでいる。日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)によると、2022年上期(1月-6月)の新車販売台数は、前年同期比15・4%減の208万6178台と前年を下回る結果となった。半導体不足や、中国・上海のロックダウン(都市封鎖)などが影響し、部品供給の遅れが課題となっているようだ。

 一方で、加工機へのニーズには、既存機に、駆動や制御に関わる機構をNCに組み替えるレトロフィットの引き合いがあり、メーカーの中にはオーダーメードで対応している。

 線材加工機は従来、ワークの位置決めなどの微調整が必要な工程では、熟練作業者の経験や勘を頼りにする部分が大きかった。しかし、近年の製造現場の人手不足に伴い加工品質を安定させるため、デジタル化への要求が高まっている。NC化することで、幅広い種類のワークの加工に対応できるほか、加工前の段取りの時間が短縮でき、生産効率の向上に貢献する。

 加工機メーカーの顧客ニーズに応じたきめ細かな取り組みが、製造現場の生産性を支えている。

 日刊工業新聞 2022年8月1日(月)付